霊能者ヴォイス

このお話は、男女の因縁に関わるお話です。もう20年以上も前の話になりますが・・
その頃は今の様に、「ストーカー」や「DV/ドメスティックバイオレンス」と言う言葉も余り使われず、世間を騒がす事も今ほどはありませんでした。
しかし、当然、実際には起きていて、悩んでいる人も沢山いました。むしろ、行政や法律が働かない分、その悩みも打つ手がない・・・そんな状態だった様に思います。

Mちゃんはたしか、私より3歳位年下で、彼女と私が知り合った切っ掛けは、友人の紹介でした。私が友人宅に寄った時にMちゃんもいて・・友人は彼女と犬の散歩で知り合ったそうです。時々すれ違い、顔見知りになり、動物好きな友人は声を掛け、話をするようになりました。お互いの住んでいる場所も近く、話も合い、食事に行ったり、買い物に行ったりと、急接近するように親しくなったそうです。 Mちゃんの第一印象は、とても可愛い童顔な子・・でもなんか少し暗い部分のある子だな・・そんな感じでしたが・・。
3人で過ごしているうちに、Mちゃんは恋人の話をしだしました。友人も、彼女に彼氏がいるのは聞いていましたが、お会いした事もなかったですし写真も見たことがありませんでした。Mちゃんはバックから写真を取り出し私達に見せてくれたのですが・・見た瞬間なんか寒気と言うか、嫌な感じがしたのですが、本来、私は、人の彼氏などには興味もないですし(大笑)霊視する必要もないですし(笑)チラッと見ただけで済ましてしまいましたが。聞いてみると7歳年上の(確かその位だったと思いますが・・)彼とはもう2年近く、一緒に暮らしているというのです。
「どうして結婚しないの?」等、話をしていくうちに、彼女の実家は地方では名の知れた家柄で「両親には反対されてしまうし、一人暮らしをしている事になっている・・仕送りをして貰い専門学校に入ったときに街で声を掛けられ(ナンパ??)彼と知り合い、学校にも実はもう通っていない・・」等々驚きの事実が彼女の口から次々と、出てくるのです。彼はなんでも宝石商(?)で仕事が一段落するまで結婚は出来ないとか・・仕入れのお金を彼女は実家に嘘を付き用立てたりもしている(無論!百万単位ですよ!)・・初対面の私は勿論、友人もその話は初耳で、私達は「あら・・まぁ・・」何とも言えない気持ちになりました。
そんな私達にMちゃんは話し続けました。その内容は更にヘビーで重く、私は「この子、虚言癖か何かあるのでは・・?」と疑ってしまい、引き気味になってしまう状態でしたが・・それでも彼女はまるで何かに取り憑かれた様に話し続けるのです。付き合ってから5回も中絶した事。彼は気に入らない事があると暴力を振るう事・・最後の方は泣きながら・・確かに多少アルコールも入ってはいましたがでも、ちょっと異常です。私も、その状態で友人宅から帰ってしまえば、友人がお手上げ状態になってしまいますので、帰るに帰れない・・。
相槌もだんだんと辛くなり、ついに私は「そんなに酷い男ならさつさと別れなさいよ!体壊してからでは遅いでしょ!」と・・。返ってきた答えは「でも別れられない・・なんでかどうしても別れられない」と。何かもう・・本末転倒のお話で、ただただ疲れるしかありませんでした。
誤解されると悲しいのですが、私は困っている方にお会いしたら助けてあげたい。出来る事があるなら何とかして・・そういう気持ちはきちんと持っているつもりでいます。ですが、その時は彼女から発するものが余りに私の神経に障り、どうしてもそういう気持ちになれなかったのです。第一、彼女は別れたいわけではないのですし・・かと言って何とかして結婚したいのでもないですし・・。

後日、友人は私に「今まではあんな感じではなかったのよ。びっくりしたわ。何かごめんなさいね・・。」と言いましたが「私もびっくりしただけよ。気にしないでね。でも何か少しお話も信じがたいし・・うん・・少し距離置いた方が良いのでは・・?」とそんな話をして2ヶ月くらいたった頃でしょうか、友人から夜、電話が入りました。とにかく一人ではどうにもならないので来てほしいと。切羽詰った声に驚き、タクシーに飛び乗り友人宅へ・・。
そこには、本当に変わり果てた顔のMちゃんの姿が・・。それまで私は、幽霊以外でそんな顔は、姿は見たこともありませんでした。洋服から見える部分には目を背けたくなるような痣、傷・・童顔で可愛い筈の顔は腫れ上がり唇は切れ、目の周りにはまるで映画か、漫画でしか見ないでしょうというような(苦笑)パンダのような痣、青黒い痣・・。友人は震え、血の気が引いてしまっています。私とて幽霊で免疫がなければ(?)倒れてしまいそうでしたから・・。どんな暴力を受ければそんな姿になってしまうのか・・想像する事も恐ろしい状態でした。
彼のした事です。
パニックになっている友人、一点を見つめる様に虚ろなMちゃん・・。「実家に電話しなさい。明日来てもらおうね。私も話すからね。警察にも行こうね。病院も・・ね。」私は言いました。彼女は、「殺される・・もう多分駄目・・間に合わない・・。私は彼に殺される運命なの・・分かっているの・・。」と。この《運命》と言う言葉が私の霊的な部分を刺激する事になり(着火してしまった?)「どうしてそんな事を思うの?いつからそんな事考えていたの?助けるから!とにかく病院だけでも行きましょう」彼女の答えはすべてNOでした。彼女の口から出る言葉は何かおかしい・・何とかしなくては・・。
そんな酷い怪我でしたが、今回の怪我は命には関わらないとも感じました。とにかく友人と出来る手当てをして、布団に寝かせ私達も横になりました(私も泊まるしかないですよね・・)

どの位立ったでしょうか・・部屋に私達以外の何かの気配があります。そっと目を開けると、男性が立っています。40代後半位の感じですが、何が恐ろしいかと言うと、文化包丁のようなものを両手に持っているのです。心臓が止まるくらいの恐怖でした。何せMちゃんの尋常ではない事態の直後ですから、一瞬、彼氏が来てしまったのかと・・殺される!と本当に思いましたが、入って来られるはずないですよね・・(苦笑)幽霊でした。
仁王立ちをし、殺気立った形相で、Mちゃんを睨み付け今にも刺してしまいそうな雰囲気です。もうこうなったらする事はひとつです。とても話しかけれるような状態ではないので(本当に殺気がひどく)幽霊の心や状態を霊視して見ました。独り言のように・・彼から伝わってくるのは「この女(アマ)!ぶっ殺してやる!許さないからな!」数々の汚い言葉での殺意です。更に正体も分かりました。翌日、起きてきた友人に事の次第を打ち明けて、その後、天井を見つめたままのMちゃんに話をしました。 「貴方の彼氏にはとんでもないものが憑依しているのよ。」と・・。
実は、その彼には母親の兄である亡くなった叔父がぴったりと憑依していました。しかも、彼が3歳くらいの時からです。この方は、かなりの酒乱で、奥さんや小さな子供にまで手を上げる、手の付けられない乱暴者で・・と言うよりもう、精神異常に近いですね。ある時、追い詰められた奥さんは思い余って、子供を守る為にと、暴れ狂う夫を包丁で刺して殺してしまったのです。
私の霊視からもその時の奥さんはもう殺すか殺されるか・・本当に切羽詰った状態であったことが伝わって来ました。奥さんもその後、病気で亡くなっています。またお子さんも事故で・・。その叔父が3歳から憑いているのですから、彼氏の人格は殆ど叔父と同じと言っていいでしょう。しかも、Mちゃんはその奥さんとまるで瓜二つ、そっくりなのです。勿論、生まれ変わりや、奥さんの親戚等ではなく、関係がないのですが、とにかく顔が生き写しなのです。
街で声を掛けたのは彼氏ですが、それは憑依した叔父の意思に他なりません。彼女も彼と出会ってからきっと無意識でも発せられる殺気を感じていたのだと思います。その恐怖やら、霊的影響やらで少しずつ・・引っ張られてしまい、また精神的にも少し参ってしまっていたのでしょう。彼女の口から出る言葉はそう言う意味だったのです。
この結果を聞いたMちゃんは青ざめました。彼から刺されて亡くなった叔父がいるという事だけは聞いていたのです。でもまさかそんな内容だったとは知りませんでした。私はとにかく彼女に家に連絡をして両親を呼ぶようにと説得しましたが、それでも彼女は「知られたくない・・」と泣きます。でももうそんな事を言っている場合ではないのです。私は彼の写真を預かりとにかく自宅に戻る事にしました。彼氏に憑いている叔父の霊を祓わなければ本当にMちゃんに命の危険があるからです。
しかし、とても大変で、一筋縄ではいかない・・、話たくとも説得したくとも、「うるせー!引っ込んでろ!」ここでは書けないほどの罵倒を浴びせられ、刃物を振り回され・・どうにもなりません。ご供養も、浄霊もどうにもならないのです。相手は霊でも悪霊です。その数日間、朝起きると私の体には、カマイタチのようにあちこちに切り傷が出来て、打撲のような痛みが走ります。根性が悪いどころの騒ぎではなく、狂人としか言いようがありません。元はと言えば、自分の生き方で奥さんに刺されてしまったのですが、反省はおろか、死して尚、逆恨みです。救いようがありません。疲れきってしまった私は、「もう、力で潰すしかない・・」そう結論に達した時(夜だったのですが)、叔父の霊は私に「そんな事はさせないぞ!やっと見つけたんだ!ぶっ殺してやる!」と捨て台詞のように言い、ぱっと消えてしまったのです。
「しまった!」と思いましたが、霊の気配が消えてしまっています。幾ら試しても探す事が出来ません。完全に気を消してしまっています。今より経験不足でしたし、こういう悪霊は互角に力がある場合も残念ながらあるのです。慌てて私は友人の所に連絡をしました。あの日からずっとMちゃんは友人宅にいるはずです。ところが、出かけたというのです。またまたタクシーで友人宅へ・・。Mちゃんは止めるのも聞かず、彼との部屋に戻ったと言うのです。電話に出ないからいないはず、どうしても飼っている犬が心配で連れてくると、もし彼がいたらきちんと話して別れてくると・・言って。
それからもう半日経っています。友人は私に連絡したのですが、私は集中する為電話の音を消してしまっていました。友人は戻ってくるかも、連絡があるかも・・と留守にも出来ず・・時間だけが経ってしまっています。霊感なんかなくても(笑)、彼女の身に何かが起こっている事は間違いないのです。私はとにかく彼女に気を送り、「どうか彼女を守ってください」と祈りました。そして男友達数人に連絡をし車で来てもらいました。友人も何回もMちゃんのところに電話しましたが、誰も出ません。今みたいに携帯も無いですし、連絡の取りようがないのです。この辺りと聞いていた彼女の自宅付近(一度も行った事がなかったので)に、友人達は、Mちゃんを探しに向かいました。私は残り、Mちゃんからの連絡を待つ係りです。
そして、その時の私が持つ、全ての方法(霊的)を駆使し、霊力も出し切り、叔父の霊を捕まえる事が出来たのです。更に、自分でも信じられない力で粉々に散らして無にしてしまいました。まさに征伐!と言う感じです(笑)その時の澄んだ空気を私は今も覚えています。
それまでの私には粉々にしてしまう事に抵抗感がありましたが、彼(叔父)だってこのまま狂った憎しみで残るよりいっそ無になった方が良い、その時心からそう思えたのです。一つ霊的に学んだ時でもありました。
その頃、Mちゃんは・・と言うと、探していた友人達に保護されて、病院に運ばれていました。連絡を受け、病院に行くとまるでミイラのように包帯だらけの彼女がいました。でも生きていました。(こんな言い方はおかしいのですが皆、もう駄目かも・・と思ってしまう位、緊迫していたのです)タバコの火で火傷を負い殴られ・・、あらゆる暴力の中を彼女は相手の隙を見て、愛犬を抱え外へと飛び出したのです。必死で走り、振り返ると不思議と彼は追ってきません。友人の所に戻ろうとまた歩き出し、安心したその時!なんと彼は車で彼女を跳ねたのです。縁としか言いようがないのですが、その瞬間を友人達が見ることになったそうです。
彼女を探していたがなかなか見つからず、途方にくれ、前を見るとMちゃんが歩いています。声を掛けようとした瞬間、彼女の後ろに車がやって来てポン!と撥ねたのだそうです。
彼氏は飛び出した彼女を追いかける為に自分の車を出し、見つけた瞬間にアクセルを踏み跳ねたのです。友人が悲鳴を上げるとそのまま逃げ出したそうです。骨折もしていましたが、意識もあり、無事でした。実家から両親が駆けつけました。まさか自分の娘がそんな事になっているとは・・お母様は立っているのがやっと・・と言う状態でした。お父様は娘とたいして年の変らない私のような小娘(その頃は!爆笑)の話をきちんと理解して下さり、むしろ相談までしてくれました。
そして、憑依は無くなっても、まともではない事を念頭に、その後、ご両親は彼と話し合いました。その都度、私にもご報告を下さり、私もずうずうしくアドバイスをし、彼と彼女の縁は切れました。警察沙汰にしても仕返しをするだろう事。場合によっては付きまとわれる可能性が高い事。彼女が恐怖心から従ってしまう可能性・・・。でも、このケースの場合は彼女に執着していたのは間違いなく悪霊と化した叔父ですから、その点は以前とは違います。不本意に思われる方も多いでしょうが、ご両親は手切れ金を用意して、縁を切ったのです。怪我を負わされ、散々な目に合わされて・・ご両親は内心ははらわたが煮えくり返る思いだったことでしょう・・。有能な弁護士を雇い、とことん戦う事も出来る経済力もありましたし・・。
でも、それでもそうするほど、まともではない相手だったということです。もう縁さえ切れればもうそれで良い・・そういう事です。顔が似ている・・原因、因縁はそれだけのことだったのですから恐ろしい事です。でも彼女自身、最初に一人暮らしした場所も最悪で、生活も乱れて、そういうものを呼び易くなっていた事も大きく関係しています。
しかし、極めて稀なケースだと言えますが・・。その後、実家に帰り、心身ともに回復した彼女、今もきっと幸せで元気に暮らしているでしょう。そうなのです。その時必死になって助けた友人たちや、私とは実家に戻って元気になってからは、会うことはなかったのです。私はそれで良いのだと思っておりますし、皆もきっと同じです。そんな辛い事は思い出さなくて良いのですし、終わった事!その時、居合わせた私達は皆、縁があって出会い、彼女が助かったのです。それで充分なのだと・・。私も彼女とは最初から「友人」としての縁はないと感じていましたし。縁は様々、多様なものなのですから・・。

今回、このお話をしようと思ったのは、少し前にも、元彼氏に車で付け回されて跳ねられたというご依頼者があり、ふと考えたら、同じ様な話をMちゃん以降今日まで、ご依頼の中で何回も見てきている事に改めて気付いたのです。当事者以外には信じがたい事が本当に起きている事も在るのです。
携帯やメール・・今は更に怖い時代です。ストーカーやDV・・それら全てが憑依等、霊的な問題から起こっているわけではありません。むしろ、霊的な問題は極一部です。殆どの場合は残念ながら精神的な病気です。霊能者が解決できない事も多いのですが・・。 あえて、今回はこの話をすることにしました。読んで、何か感じて頂ければ・・と思っています。
長い割には・・まとまらないお話になってしまいましたね(笑)では。