それは、今、思い出してもぞっとする、又、悲しいお話です。
私は霊視の際、<生きている者>と<生きていない者>つまり、この世の方、あの世の方の区別は、ビジュアル的にもはっきり分かるのですが、それでも稀に、まるで生きている人間と同じ様に見えてしまう事があるのです。そんな中からの一つ・・。
その日は、プライベートで友人と過ごしていました・・。
車で出かけ温泉宿に一泊し、その帰りあちらこちらと観光や買い物をして、かなり遅い時間に帰り道となったのですが・・。有名な山を一山越えて帰るルートなのですが、上がりきった所に、車道とは別に「ここからは登山道」と言う感じで、行き止まりの道があり、ポールが立って車両通行止めになっている場所がありました。
と、そこに不自然な形で一台の黒っぽいセダンの車が止まっているのが目に入りました。ポールに対してぶつかってはいないものの、すれすれで急ブレーキでも踏んだように斜めに止まっているのです。
何と言えばいいのか・・とにかく不自然に・・。
ライトも点いておらず、でも、男性が一人車内にいるのが見えました。周りに人がいる気配もなく「?・・」友人も私も変な違和感と、嫌な感じがしましたので、とにかくそこはそのまま、車を進めました。急カーブ続きの山道ですから速度は殆ど出していない状態でしたが・・。
すると、目の前を若い女の子が歩いている姿がライトに照らされ、飛び込んできました。見るからに若い、10代後半から20歳位のミニスカートの女の子です。その子は泣きながらしかも裸足で歩いているのです。私たちは一瞬、目を疑いましたが、先程の車の男性と来て口論でもして飛び出したのかな・・と考え横を通過する形になりました。
と、すぐ、前に又一台車が止まっています。なにぶん、舗装はされていますが、細い道です。すれ違うのがやっとの幅ですから・・こんな所に止まっているのは非常識としか言いようがないのですが・・。横を通過する時に、何人か、複数の人影が車内に確認出来ました。
今、思うと暗い明かりがない夜道の中で、ヘッドライトだけの明かりによって何故そこまではっきり見えたのか・・若い男性数人です。
とっさに私と友人は今、すれ違った女の子が心配になりました。考える事はただ、一つ・・。何かその子の身にあったのではないかと・・。
少し先に見晴台の様な場所があり、Uターンが可能になっていました。私達は車を止め、話し合いました。こちらも女二人・・何かの時に自分達の身は守れるか・・警察に連絡しようかとも考えました。
当時、車に電話は付けていましたが、今と違い山の中では電波が届かなかったので・・これは無理・・。公衆電話も勿論、見当たらない。私達は、つまり「何かの犯罪」に出くわしたと思っていましたから・・。迷った挙句、「このままでは、後悔する。何とかなる。とにかく戻ろう」二人で、決意して、来た道を戻る事にしました。。
と、すぐ、手前に止まっているはずの数人乗った車はありません。私たちの所を通過したという事はないのですから、Uターンもせず、バックで戻ったのだと思い、焦りました。つまり、女の子を追いかけたのでは・・と思ったからです。女の子も見当たりません。山道がある所まで戻りましたが、例の不自然な車が止まっているだけです。でも中にいたはずの男性が見当たらないのです。同じ様に、ポールの所で私達も車を止め周りを見渡し、気持ち的に一息、深呼吸をしたその時、私達の車のライトに照らされ、山道に二人の人影が見えました。
女の子と、車の中にいた男性です。真っ暗な山の道を登るというのでしょうか?しかも、本格的な登山道を、ミニスカートと裸足で・・何も持たずに・・。後で冷静に考えると、そんな怖い事が良く出来たと思うのですが、私達は、車のライトをハイビームにして合図を送りました。
しかし、彼女らは全く振り返りません。仕方なく、車を降り、追いかけました。
「危ないですよ!何かあったのですか?」
「私達も一緒に行きますから、戻って下さい!」
二人で叫ぶように呼びかけながら・・。
車のエンジンもライトも付けたままで来ました。たいした距離ではないはずなのに、こちらが走っても、距離が縮まらないのです。しかも前の彼女達は歩いているのに・・。
私ははっとしました。友人の手をしっかり握りしめ、目を見つめました。友人も私が何を言いたいのか、何をしようとしているのか、とっさに理解してくれたようです。彼女達の背中に向け、私は光を送りました(これは霊的な方法なのですが表現としては)その瞬間、彼女ら二人の姿は消えてしまいました。
「やはり・・」私は理解し、友人と車に戻りました。私達の横の車も消えていました。そうです・・。最初から、車も、彼女らも、もう一台の車のこの世には存在していなかったのです。その時一緒にいた友人も今、起こった事をきちんと理解していました。当然、本来なら冷静ではいられない状態であったにもかかわらず・・。
そして、泣いていました。細かい説明こそまだでしたが、友人は、その子の身に起こった事を感覚で理解して、泣いていたのです。自分が今、体験した心霊現象より、それによって知った彼女の事を想い、悲しくて仕方がない・・そんな泣き方でした。
お読みの皆さんもお分かりでしょうが、彼女と彼は亡くなっています。複数の男性達は彼女が残した残像で、生きています。(勿論、そこにはいませんが)亡くなった方が、こんなにはっきりと出てくる事は珍しいケースです。まして、私だけではなく、霊能力のない友人にもはっきりと見えているのですから。
何より、私の目に生きている人という感覚で入ってくる事も少ないケースです。泣いている友人を元気付けるようにして、私達は、家路を急ぎました。
この話にはまだ続きがあるのです。
一週間も経った頃でしょうか。友人からでした。約束をして、待ち合わせ場所に行くと・・友人の隣に赤いコート、レインコートの様な薄い真っ赤なコートの女の子が立っています。
「これは・・まずい事になっている。」強く感じました。確かめる様に近づくと・・その子は隠れる様に後ずさります。でもその顔は、そうです・・あの日、山道を歩いていたその子なのです。友人にその事をどう告げようか、又この子をどうしようか・・考えをまとめていると、友人が先に言い出しました。「あの日以来、赤いコートの女の子の姿をよく見るの・・変でしょ?いつも同じ赤いコートなのよ。車運転していて信号待ちで交差点にいたり、家の前で見たり・・駅のホームでも・・私に何か今、憑いているんでしょう・・」彼女は遠目に見ているようですが・・はっきり横にいるのです。
「うん・・憑いてる。というか、訪ねて来てしまったという所かしら。その子はね、あの時の子よ・・。分かってる?」
「え!?でも服装が違うでしょう?」
「そうね・・」待ち合わせ場所からすぐ、私の所へ移動する事にしました。落ち着いたところで、きちんと処理をしなければならないからです。その子も一緒に・・。「着いて来てね・・助けてあげられるから・・」素直に友人の後を着いてきました。
交霊、つまり霊話を開始していきました。女の子は16歳でした。BFと山に遊びに来て、男性達に目を付けられ、彼も守りきれず・・の事でした。その後手首を切り自殺していました。風呂場一面が血の海・・光景が霊視出来ました。後を追う様に彼も事故で亡くなっていました。
大体の所、女の子に起きた事は先日、考えたとおりでしたが・・。赤いコートは彼女の最後のイメージなのです。「彼は一緒にいないの?会えない?」私が聞くと、黙っています。彼を呼び出すことが出来ました。
彼の事故は不注意による運転ミスでしたが、彼女の事でショックを受け、半分、生きるのが嫌になっていた、彼女の死後、後を追うような気持ちになっていたことも確かでした。若い二人です。夢も希望もあったのですから・・。本当の事も言えず、悩み、死を選んでしまった彼女・・。
家族は何も知らないのです。色々な事が、今も彼女を苦しめ、さまよう事になってしまっているのです。彼はその日の安易な行動の後悔と、彼らに対する激しい恨みを語りました。でも、私が彼らにしてあげるべきは、供養であり、この世にとどまらない様、その道を照らす事なのです。あの日、自分の事の様に泣いてくれた友人に憑いてきてしまったのです。その行動もある意味、年相応の幼さを感じざるを得ませんでしたが・・。
彼女達を本来の場所に行けるよう・・説得しました。きついようですが、自殺と言う行為で命の幕を閉じてしまうと、その後、何処に行けば良いのか・・何をすれば良いのか・・分からなくなってしまう事が多いのです。又、残された家族も苦しむ事になってしまいます。知りたくとも知る事が出来ない、何があったのか・・真相を求め苦しむ事になってしまうのです。
そして、彼女達は納得し、上へと上がっていきました。全てが終わり、友人は私に言いました。
「霊なんて見たくもないと思っていたし、怖いと思っていた・・。でも貴方がいつも言うのが少し分かった気がする・・。霊より怖いのは人間なのかもね。」
女の子の命日が分かったので月命日に二人でお花を供えました。体に血が殆どない状態で亡くなった彼女にもうコートを着なくて良い様、赤い花と真っ白な花を・・。
友人はその後、赤いコートを着た女の子を見る事も、霊に会うこともありません。私は基本的には<生あるもの・そうでないもの>の区別はきちんとついていますが、それでも極々稀に、こうした体験もあります・・。
今回、このお話を致しましたが、最後には、やはり、女の子と彼のご冥福を心から今一度、願わずにはいられません。
二人が安らかでありますように・・。